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ボンクラーズに勝つには…(前編) [将棋]

 1月14日に行われた、コンピュータ将棋のチャンピオンソフトボンクラーズと米長邦雄永世棋聖との対局は新聞やテレビでも報道されたように、113手まででボンクラーズの勝利となった。
 後手番の米長永世棋聖の初手は、前回の対戦と同じく6二玉。
 この手についてはいわゆる定跡にはない手なので、奇策だとか言われていて、米長氏としては奇策とか書かれるのは心外であるらしい。ボンクラーズと対戦するにあたって、米長氏は前もっていろいろと対策を練り、考えに考え抜いた結果やはり6二玉がボンクラーズと勝負するには最善であろうという結論を出したようだ。
 現に前回のボンクラーズ戦における敗戦の時に米長氏は
「6二玉自体は立派な指し手であるが、そのあとの私の指し方がまずかった。6二玉という指し手に大変申し訳ないことをしてしまった。」
 という弁を述べており、その言葉通り今回の対局では序盤の手順に工夫を加えていた。後手は6筋7筋に位を取ることに成功し、おそらく序盤から中盤の入口までは米長氏の構想通りに進んでいたと思われる。
bonyone1.png

 44手目△8五歩までの局面。6筋7筋の位が手厚い。先手としても玉の硬さは万全なので何とかして攻めたいのだが、今すぐ有効な攻めはない。ボンクラーズの指し手が見ものであったのだが・・・。

 ▲7六歩△同歩▲同飛△7五歩▲3六飛△8二飛▲6六歩△同歩▲同飛△6五歩▲9六飛△7三桂▲1五歩△7二玉
bonyone9.png

 図でボンクラーズが出した結論は・・・指されてみれば実に単純だった。有効な攻め筋がないから手待ちをして相手の出方を待とうということである。▲4六歩から高美濃に組み替える手順も考えられるがこの局面の場合は飛車が横に行く余地がなくなってしまうのでこのまま平美濃で手待ちをした方がよいと考えたのだろう。
 有効な指し手がないからと言ってこのように飛車が行ったり来たりを繰り返すのは、人間から見たらばかばかしいようにも思える。だがしかし、どんな局面でもお互いに一手ずつ必ず指さねばならないという制約があるゲームにおいては、こういう一見バカげた行為を何のためらいもなくできるということが、逆に強みになってしまうことがあるから将棋は面白いのだろう。

 ▲7六歩△同歩▲同飛△7五歩▲4六飛△8三玉▲7六歩△同歩▲同飛△7五歩▲7八飛△4二金▲5六歩△5三金▲6六歩△同歩▲同角△6五歩▲5七角
bonyone10.png

 先手は似たような手順で飛車を動かす。これに対して後手は8三玉とやはり入玉含みの指し方だ。かって升田幸三実力制4代名人がアマ強豪として有名だった小池重明氏との角落ち戦でこういう指し方で快勝した将棋がある。この8三玉を見てボンクラーズはまた7六歩の合わせから飛車を7筋に戻した。
 思うにここで後手は千日手になるのを承知でもう一度7二玉と指すべきだったようだ。先手は8筋を受けるのならば7七角と上がるのが自然だが以下△8三玉▲8八角△7二玉▲7七角と繰り返せば千日手になる。
 しかし米長永世棋聖としては当初の構想通りに進んでいるから千日手にしようなどという発想は浮かぶはずもなかっただろう。後手なら千日手狙いで行く作戦も現在の将棋界では珍しくはないのだが、米長氏としてはあくまで勝つことを前提として用意した作戦であるから、もっと優勢にしようと遊び金を活用して金銀の連携をよくしたのだ。
 だがよくよく考えてみると、先手は8三玉を見て7八飛と飛車を7筋に戻したのである。似たような手順が繰り返されているようなので気づきにくいのだが、これまでの手待ちの意味の飛車の移動とは明らかに違い、8三玉を攻撃の標的にするべく飛車を7筋にすえたのだ。そのことは5六歩から6六歩同歩同角とした手順に表れている。ボンクラーズは8三玉を見て7五の地点に攻めを集中させようとしているのだ。8三玉がボンクラーズの攻めを誘発させてしまった、ということになる。
 そしてさらに言えば、何気なく上がった後手の5三金。
 これが実はものすごく罪の重い一手になってしまうことを、果たして米長永世棋聖は指した時に想像していただろうか。

(つづく)

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